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代車
第12章 麗と弥生
「バックの中に私、何でだろう 石入れて響の処に行ったんだ」
「響、名古屋で働いてる時 お店のマダムと朝までいて
マダムが寝ている時 お店の鍵持って お店に行って売上金持って
東京に来ていたんだって それで指名手配されてたから
傷が治ったら逮捕されるって 私も久美と一緒に辞めます
母の下へ帰ります」と頭を下げた渡部は優しく見つめ頷いた
退社時間に成り 飯田と宮崎が花束を持ち玄関から見送られ
何時もの様に 渡部の周りだけ 明かりの灯る部屋で作業をしていた
壁の時刻を見上げ パソコンに目を向けた時 橋本がコーヒーを持ち静かに
入って来てコーヒーを渡部の席に置いた
渡部は有難うと言いながら画面から目は動かない
目を橋本に向け行くかと言うと
橋本は目を輝かせ
「はい!」この部屋に入って初めて声を出した
車を走らせイタリアンレストランへ向かい 車中で何時も饒舌な橋本が
時々渡部の顔を見ながら黙って座って居た
レストランで紅茶を飲み始めた時 橋本が思い切った様に口を開いた
「お付き合いして いただけますか?」
渡部は優しい目で見つめ
「映画も行ったでしょう ゲームセンターもいったでしょう
ご飯も何回も行ったでしょう お付き合いしてるでしょう」と言うと
「そうですね」と明るい顔で宜しくお願いしますと頭を下げ満面の笑みを浮かべた
駐車場までの道を 渡部の腕を持ちスキップするように歩く
橋本のアパートの前に車を止めると 嬉しそうに渡部の顔を見て
「お休みなさいと」玄関に入って行った