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代車
第14章 琴音
琴音が目を開け ボトルの水を渡すと
両手で持ち 三分の一程飲んだ
渡部は時刻を確認して
「琴音ちゃん 帰ろうか?」
と言うと 渡部の目を見て
少し間を開け頷いた
渡部は パラソルを抜き海の家に帰し
琴音の手を引き駐車場へ向かう
砂浜を出た時 渡部立ち止まり
砂浜を 名残り惜しそうに見ていた
振り返った顔には 悲しみが滲み
車が動き出すと 琴音は熊手を 握りしめながら寝息を立て
足元には アサリの入ったバケツが置いてあった
琴音の寝顔を 時折眺めながら
渡部は視界を塞ぐ 涙を拭っていた
残された 時間は少ない
投げ出された手を そっと 握りながら
車を 何時もの駐車場へと 走らせていた