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ジャスミンの花は夜開く
第5章 抑圧
出てみると、アルバイトの面接をお願いしてあったイタリアンの店長からだった。
本来ならランチ営業が終わった2時半にアポイントメントがあったのだが、店長の都合でランチ営業の前、10時半に来れるか?とのことだった。
茉莉花がふと時計を見やると、9時50分。
ゆっくり歩いても20分もかからない距離なので、間に合うことは間に合う。
しかし、これでまた自慰に邪魔が入ることとなってしまった。


店長は予定が変わったことを謝罪したが、致し方ない。
茉莉花は、これから用意をしてすぐに家を出る旨を伝え、電話を切った。


身繕いをして家を出たら、面接の時間に15分ほど遅れてしまった。
まだ茉莉花の体の中に、邪念の炎が燻っていたからだ。
メイクをしても、気分が乗らない。
湿った三角州には、むず痒い感覚さえ残っていた。
心がグラグラした状態で準備をしても、無駄な時間だけがかかった。


「いやー、ごめんね!急に時間を早めちゃって!」
「いいえ…、とんでもないです」


明るい雰囲気が漂う店長は、40代半ばと思われる。


「商店街の会合がさ、急に入っちゃったもんでね」


履歴書に書いてあった茉莉花の出身地を見て、店長は「俺も同郷だよ!」と目を開いた。
そこから面接なのか故郷の話題なのか、とにかく話が盛り上がり、あっという間にランチ営業の時間になってしまった。


「じゃあ楠木さんは、採用ということで!」


店長が笑顔で右手を差し出す。


茉莉花は「はい!お願いします!」と深々と礼をしながら、それに応えた。


「明日から入れる?」
「もちろんです!ランチでもディナーでも大丈夫です!」
「そう!じゃあさ、とりあえず、うちのランチ、食べて行ってよ!」
「えっ?いいんですか?」


面接が長引いてしまい、いつの間にか営業時間に入っていた。
日替わりのパスタランチをご馳走してくれるという。
ランチ代が浮いて助かった茉莉花は、自分で食べるパスタの数倍美味しい食事にありつくことができ、えびす顔であった。
周りを見回すと、まだ12時前なのにそれなりに客が入っている。
グルメサイトでも高評価な店だけのことはある。


食事を終えると、茉莉花は尿意を覚えた。
店長にトイレを拝借することを伝え、女性用のドアを開けて中に入る。
先客がいるのか、4つある個室の一番奥の扉は閉まっていた…。
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