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ジャスミンの花は夜開く
第1章 発見
話を聞くと、今日、1階の真ん中の部屋の住人が急に退去したという。
「まったく、最近の若い子には困ったもんじゃ。昨日挨拶に来て、今日引っ越しさ」
どういう経緯か茉莉花は聞かなかったが、その住人にもそれなりの事情があったのだろうと察するより他になかった。
「で、お嬢さんは部屋を探してるって?」
「は、はい!」
「じゃあ、部屋、見てみるかい?」
「ぜひ!お願いします!」
茉莉花が深々とお辞儀をした。


通された102号室は6畳2間。
奥がリビング兼寝室で、手前がダイニングキッチン。
奥の部屋には隣の部屋との壁にファンシーケースが置いてあった。
掃き出し窓の先には小さいながらも庭のような物干しスペースがあり、ささやかな緑を感じることができる。
隣との間仕切りのようなものはなく、ひと続きに細長い。


「あれはね、前の住民が置いていったやつさ。『車に積めないから処分してください』って。外は庭とは呼べんが、部屋と同じ幅だけ自由に使ってくれて構わんよ」
ダイニングには備え付けの物は何もなかった。
築年数は30年以上経っていそうだったが、今の茉莉花にこれ以上の贅沢は言えない。
「急に出られてしまって、明日にでも不動産屋にお願いしようと思っていたところなんじゃ」
背後で大家が言った。


「あのー、たいへん聞きにくいのですが、お家賃はどのくらいでしょうか」
「うちは8万5000円じゃよ」
「8万5000円…ですか…」
茉莉花の落胆ぶりが伝わったのだろう、大家が聞いてきた。
「高いかい?」
「いいえ…全然…」
8畳のワンルームマンションでさえ10万円以上するのに、合計12畳プラス小さな庭まで付いて8万5000円は破格と言っていいだろう。
それでも今の茉莉花に手の届く物件ではなかった。


「お嬢さんの予算はいくらなんじゃ?」
大家が率直に聞いて来た。
茉莉花も遠慮せずに「7万円…なんです」と俯きながら答えた。
「そうかぁ、7万円かぁ…」
ごま塩頭をポリポリと掻きつつ、大家は何か考え事でもしているようだった。
「こんなお家賃じゃ無理ですよね」
茉莉花は精一杯の愛想笑いをして、部屋を出ようとした。
「じゃあ私はこれで失礼します。お忙しいところ、たいへん申し訳ありませんでした」
「いや、待ちなさい」
大家は茉莉花の腕を掴んだ。
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