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ジャスミンの花は夜開く
第2章 入居
ひとつ目の条件はこうだった。


大家は連れ合いを5年前に病気で亡くした。
以来、部屋での話し相手がいなくて寂しい思いをしているから、週に一度、茉莉花の身の回りで起こった出来事やアルバイトの話などを、一緒に食事をしながら聞かせて欲しい。
要するに、茶飲み友達感覚で週に一度、大家の部屋でお喋りを聞かせて欲しいとのことだった。


「もちろん食事は儂が用意する。あんた…、いや、楠さんじゃったな…、の好きなものを用意しよう」
金銭的に余裕がない茉莉花には、食費が浮く上に家賃まで安くなる魅力的な提案である。
「それくらいお安い御用です!私の話なんかで良ければ、いつでもしますよ!」
お喋りは女性の特技だ。
茉莉花も他愛のないお喋りが、他の女性と同じように好きだった。
相手がクラスメイトや幼馴染から入居するアパートの大家に変わるだけだから、二つ返事でOKした。


ふたつ目の条件はこうだった。


大家は連れ合いとは以前、隣町の一軒家で暮らしていた。
このアパートは投資用の物件として、ずいぶん前に購入したらしい。
管理も全て不動産会社に任せていたものの、連れ合いを亡くしてからは一人で一軒家で暮らすには不経済ということで、そちらを売却してコーポ弥生の一室に収まることにした。


当然大家には、その時に得た数千万円の蓄えがある。
それを狙って、様々な勧誘がここまでやってくるという。
いくら断ったところで、あるものがあることは知られているので、いくら男とはいえ、自分一人ではどうにもならないこともあるそうだ。


「そこでの、楠さんには儂の彼女のフリをして欲しいんじゃ」
「は、はい?」
茉莉花には意味がわからなかった。
親子、いや、下手をしたら孫にも見えるほど年齢が違う女性を、嘘とはいえ彼女にするとはどういうことだろう。
「あ、あのー、それは具体的に何をすればいいのでしょうか?」
恐る恐る聞いてみる。


「資産運用がどうの、投資信託がどうのとセールスがやってくるんじゃ。そこで楠さんに彼女ヅラをして儂の部屋に来てもらう。彼女とはいえ赤の他人じゃ。セールスも居づらくなって帰るじゃろ」
大家の言い分は多少無理もあったが、茉莉花には7万円という家賃の餌がぶら下がっている。
「そ、そうですね、できる範囲で頑張ります」
そう答える以外、茉莉花に正解は見つからなかった。
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