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そんなの聞いてない!!
第3章 ウソもホウベン
「七隈と付き合うことになったんだろ」
「え?」
「それ、たぶん俺のおかげだから」
「は?」
――なに言って……?
「七隈が俺に相談してきたことは聞いた?」
「……ああ」
「それで俺が『福浜に相談してみるのは?』っておまえをすすめたのは?」
「聞いた」
「何でそこで俺は、おまえの名前を出したと思う?」
「わからん」
「即答かよ。はぁ、おまえが七隈のこと好きだって気づいてたからなんだけど」
「えっ」
――俺、完璧に隠してたつもりなんだけど!?
「おまえは隠してたつもりだろうけど、七隈を見る目がもうあからさますぎてバレバレ」
「マジ!?」
「それに誰かに告られて『性欲ない』って言ってたのも、どうせ女よけのウソなんだろうなってわかってた」
「えー……わかりすぎてて怖っ!」
「黙れ。おまえがそんなだから、七隈はなかなか踏み出せなかったんだぞ」
「は? どゆこと?」
「七隈は……おそらく、入社してすぐからおまえに気があったはず。男慣れしてないのにおまえと絡むときは自然に笑おうと頑張ってたからな」
「……え? 待て。え、なに。俺より先に、七隈のほうが俺を好きだったってこと?」
「俺の観察による予想では、そうなるな」
「えぇぇ……」
両思いってやつだったのに、俺が『性欲ない』なんて余計なウソを広めたせいで七隈を悩ませてたってこと!?
――うわー……アホだな俺。
「こいつら、両思いのくせにじれってぇな! と何度思ったことか」
市崎が呆れ顔でため息を吐く。
「いやいや、知ってたんなら教えてくれよ!」
「はぁ? 甘えんな。俺は俺で忙しかったんだよ! 好きな子にセフレが2人もいてな!」
「え……やるな、その子」
「ああ、めちゃくちゃかわいいんだ。……って俺のことはいいんだよ。まぁ、おまえたちもうまくいったんなら結果オーライってことだな」
「……今度メシ奢るわ」
「おう。週末以外でよろしく。カフェラテさんきゅー」
さわやかな笑顔を見せて給湯室を出ていく市崎。
その背中を見送りながら、今夜……七隈と話そう。と考えていた。