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そんなの聞いてない!!
第1章 ウワサ
――う……、最悪だ。
俺は七隈が好きだ。
告白されても「性欲がないから」と言って断ってるのは七隈だけ見てるから。
だけど、それを七隈に聞かれるのはまた別の話だろう。
「……七隈もお疲れ。で? こんなとこで何してんの、市崎」
動揺を悟られないように平然とした態度で市崎に話を振る。
「ああ、俺は七隈の付き添い」
「付き添い?」
「七隈がおまえを探してたから。たぶん非常階段のとこだろーって教えたけど、場所的に1人で行かせるのはどうかと思って」
「あー……」
俺が田中に呼び出されたところを見ていたらしい市崎。
いやそこは、知らない。と言ってくれたらよかったんじゃないか? と福浜は苦笑する。
「無事に送り届けたから、俺は先に戻るわー」
手をひらひら振ってこの場をあとにする市崎を見送ってから福浜はやや緊張しながら七隈を見た。
――俺を、探してたって?
七隈は市崎と仕事を組まされることが多く、福浜との絡みは多くない。
市崎が他の仕事で手一杯なときに何度か七隈のサポートを任されたことはあるが、サポート必要か? と思うほど七隈は優秀だった。
「何か、急用だった?」
「あ、ええと……」
福浜が話しかけると七隈はなんだか言いにくそうに目を伏せる。
伏せたことによってわかる化粧っけのない自然なまつ毛の長さに見とれてると、七隈がこちらを見た。
左右ほぼ対称の猫目。
目元だけを見ると気が強いクールな印象を受けるが、七隈はどちらかというと控えめな性格だと思う。
ほとんど絡んだことのない俺がいうのもなんだが。
「福浜先輩、今夜お時間ありませんか?」
七隈の言葉に耳を疑う。
「……え。俺?」
「はい」
「今夜?」
「そうです」
「時間はあるけど……」
「急ですみません。相談したいことがありまして……ごはん行きませんかっ!!」
語尾が強くなる七隈。
相談したいことって何だろう。と思いながらも誘われたことが嬉しい福浜は内心にやついていた。