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そんなの聞いてない!!
第1章 ウワサ
数少ない行きつけの店からここを選んで本当によかった! と福浜が心でガッツポーズをしていると
「あの、福浜先輩。そろそろ……いいですか?」
箸を置いて、七隈が姿勢を正す。
その改まった様子に、そうだった。相談があるんだったよな。と思い出して福浜も同じように箸を置いた。
「どうぞ」
「その、突然こんな話をしたら、福浜先輩を困らせるってわかってるんですけど……」
「うん」
「本来なら同性の人に相談すべきなんでしょうけど、私、友達が少なくて……」
「うん?」
困らせる? 同性? 話が見えなくて福浜が小首をかしげると、七隈は落ちつかないのかソワソワした様子で自身の腕をさする。
「ウワサで……福浜先輩のこと耳にはしていたんですけど、今日の昼に田中さんに断りを入れてるのを実際に聞いて、ああ、本当なんだって……。聞くまでは今日食事にお誘いするかまだ迷っていたんですけど……」
――えっ。あ、やっぱり七隈も俺のウワサ知ってたのか……。
七隈の予想外の話に、福浜はどう反応したらいいかわからず、ひとまず黙って聞くことにした。
「福浜先輩にしても深刻な問題かと思うんですが、教えてほしいんです。性欲のなくし方や、抑え方を!」
――は、い? 今、性欲って言った?
正直、性欲の性の部分を微塵も感じさせない純粋そうな顔をした七隈に惹かれて好意を持った。
そんな性に興味ないだろう七隈を俺の手で性に目覚めさせていけたら……。なんて妄想を幾度したことか。
なのに現実の七隈は「性欲の抑え方を教えてほしい」と言っている。
つまり、七隈はとっくに性に目覚めていた。ということだ。
――……いや? 待て。早まるな、俺。
七隈のことだから、相談の仕方が下手なだけで違う意味合いがあるのかもしれない。