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青い煩い、少女の情動。
第9章 曖昧な心

響君が立っていた。
体育館の入口で、姿勢良く私を待っていた。
いつもだったら本でも読んでいるのに、今日は突っ立っているだけ。さっきはそんなこと無かったのに、今は一目でそわそわしているのが分かる。

どうしたんだろう?
予定より長く待たせてしまったので怒っているのだろうか。

[ごめん、結構待たせちゃったね、]

『ううん、全然大丈夫。』

[……]

『……』

どことなく気まずい空気が訪れる。
最近は無言になっても、気まずさを感じないくらいには気の置けない関係になったと思っていたのだが。
響君が醸す非日常的雰囲気がこちらにも伝播している。

『じゃあ、帰ろうか。』

[うん。]

2人は辿々しさが残る様子で外へ踏み出した。


私は自転車を押しながら、隣を歩く響君の様子を定期的に伺っている。響君はやはりいつものゆったりとした感じではなく、余裕なさげな振る舞いだ。

[テストっ、響君のおかげで結構できたよ。]

『ほんと?良かった。』

[平均的は絶対超えてると思うっ、]

『そうだといいね、』

私が話題を振ってもたった数回のキャッチボールで会話が終了してしまう。
2人の間に鋭い風が吹き抜けていく。
自転車の車輪が回る音のせいで沈黙がより強調されてしまう。それがいじましかった。

あのさ、

会話を振ろうとして、やめる。
自分は何を話そうとしたのだろうか。

重たそうなレジ袋を持った主婦が、
下校中に戯れあっている小学生たちが、
仲睦まじそうに寄り添って歩く若い男女が、
全員が私たちを見ているような気がした。

自然と遠くへ行ってしまう視線が、不安な心を如実に表す。

小石がアスファルトで擦れるローファーに蹴飛ばされて、グレーチングの細い隙間に落ちていく。側溝へと転がり落ちた小石は、下水へと流されるのだろうか。

電線に隊列を成すカラスが恨めし方な目をして、やけに発色のいい黄色の嘴が威嚇のように吠えた。

響君……何かあったのかな……。

自分に解決できる問題であればいいのだが、
どうやったら戦争がなくなるか、とか、真の平等とはなにか、とか聞かれても答えられるはずがない。ましてや家庭内の問題とかであれば尚更。

私の宙ぶらりんな状況を表すに言葉は、
広辞苑を漁っても容易には見つからないだろう。

自転車の錆びたチェーンが摩擦で悲鳴をあげていた。
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