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青い煩い、少女の情動。
第9章 曖昧な心
『良かったですね、若宮先輩っ。』

ぇ?

[ぇ、何が?]

『何がって、都野先輩が言った"好きな人"って若宮先輩のことじゃないんですか?』

全身が震えた。
電流が流れたとも鳥肌がたったとも形容し難い謎の感覚が訪れる。

そんなことあるの……
響君が私のこと好きだって……ことが、

[ぇ、そうかな……、]

『絶対そうですって、さっき体育館でポカリ渡してるところとか完全に付き合いたてのカップルだったもん。』

[そう……かな、]

皆んなから集まる好奇の視線と後押しの声。
それが素直に受け入れられないのは、自分がなにかズレているのだろうか。

すると、ひょこっと同級生の時雨田花音が現れる。

『私が知ってる範囲では、響君と一番仲良さそうにしてるのは莉央だよ。』

それで、
ひゅー、という冷やかしが部屋にこだまする。

そんなの全然説得力ない。

メンバーの皆んなは好きだけど、
こんな俗っぽい戯れは本当に面倒くさい。

発端を作った後輩も、少し申し訳なさそうにしている。

はぁ、

思い違いをして、舞い上がってはいけない。
響君は私のことを単なる友達としか思ってないかもしれないし、なんなら……

でも、
勘違いもいけないが、過度のマイナス思考も良くない。正解なんてないのだろう、この世界。

私はそそくさと部室を後にした。
腕を鼻に近づけて、仄かに香る柑橘類の爽やかな匂いを確認する。

いつも通りに……普通に振る舞おう。
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