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青い煩い、少女の情動。
第3章 机の角の感触は、
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[えっと、あんまり読めなかったけど。ちょっと読んだだけでも面白いの分かったよ。描かれる世界がとっても綺麗で、行ってみたいなぁって思った!』
私が拙い言葉で精一杯感想を告げると、響君は目を輝かせて
『そう、そうなの。世界描写が丁寧で尚且つわかりやすくて、綺麗。夜崎なこの魅力はそこなんだ。』
と熱烈に語りたい始めてしまった。彼が語っている間、私は呆然としてその場に佇んでいたが、彼がふと
『楽しいね……。』
と呟くのを聞いて心が満たされた。話の内容は全然理解できないし、会話が成立しているのかさえ怪しいが、私の存在が彼を笑顔にしているという事実がただただ嬉しい。
『……若宮さん?』
ぽーっとしていた私を冷涼な声をが現実に引き戻す。名前!そうだ名前に不満があった。
[そのっ……。名前、若宮って名字で呼ぶんじゃなくてさ……下の名前で呼んでくれないかな?]
口に出すだけで恥ずかしい。妙な提案だと首を傾げられないか心配だ。それに、頼み事を断れない響君を利用しているようで良心の呵責がある。
『うん、分かった。莉央……だよね。』
響君はあってる?と首を傾げてこちらを窺うが、私にはそれを認識している余裕はない。
…………
胸が張り裂けそうだ。自分の下の名前を覚えていてくれた事が何より嬉しい。これだけで今日の5、6時間目のテストを乗り越えられそうだ。
私と響君は昼休憩中ずっと、感想をいったり、オススメの本を聞いたり、おしゃべりして過ごした。
生まれてこの方一番幸せな時間に違いなかった。
…………
…………
やっと5、6時間目の地獄を乗り切ったーと思って周りを見回すと、そこには誰もいない。電気も消されていて、若干傾きかけた太陽の光が絶妙な薄暗さを演出していた。時計は4時30分を指している。6時間目が終わったのが3時20分だから、学校が終わってからもう既に1時間以上が経過していた。
[寝ちゃってたのかな?]
昨晩、疲労を押して読書をし、その結果寝落ちしてしまった私は今朝寝坊したことからも分るように明らかに寝不足だった。きっとテストが終わって電池が切れてしまったのだ。
机には美琴の字で[帰って早く寝ろよー]と書かれた付箋が貼ってある。美琴はいつも私に世話を焼いてくれるな。と内心感謝していると、視線は自然に私の席の左前方に向かっていた。
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