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青い煩い、少女の情動。
第1章 図書室の誘惑
『私が代わりに行っといてあげるから。』
[……でも。]
『早くしないと他の女に響君取られちゃうよ。』
[うぅっ。分かったよぉ。]
響君が他の女の子と一緒にデートに行ったり手を繋いでいる姿を想像して、とてつもない嫌悪感を抱いた。響君とお近づきになりたい、あわよくば恋人になりたいとは思う。
でも急に行って響君迷惑じゃないかな?
昼休憩になって私は急いでお弁当を片付けて、図書室に向かう。教室を出る際に美琴に親指を立てて[任せた]と告げる。美琴は『任せろ』と低く男性のようなキメ声で私を送り出した。響君は既に教室にはいない。昼休憩になると早々にどこかへ行ってしまうのだ。もしかしたらお昼ご飯を食べずにずーっと図書室にいるのかもしれない。たしかに彼の身体は細くしなやかで、容易く折れてしまいそうではあるが、それでもご飯食べないで大丈夫なんだろうか。
廊下を早歩きで進みながらもそんな思考を巡らす。みんなご飯は教室か食堂で食べるのでこの時間帯の廊下は静かだ。図書室はもっと静かだろう。
そして、校舎の最上階にある図書室についた。私は、ドア窓にうっすらと反射する自分の姿を見て前髪を直し、表情を整え、今度は視線を下げてスカートの裾を直した。
[よし!]
気合十分。戦地に踏み出す兵士のような面持ちで図書室に踏み入る。ドアの上部についていたドアベルが涼しげな音を奏で、司書さん、図書係の女の子、そして響君の視線が一気に私に集中する。胸がドキンと跳ねた。
[こん……にちは]
司書さんと女の子は軽い会釈のみで私に挨拶をした。図書室では声をあげるのはタブーなのかも知れなかった。私が視線を響君に向けると、響君はさぞかし驚いたというふうにキョトンとした目をしていた。
『若宮さんが図書室に来るなんて珍しいね。』
響君の声は清流のせせらぎのような透き通った声だ。私の耳は幸せで卒倒しそう。
[……えっと私も最近本に興味あって、その……響君いつも本読んでるから、なんかオススメの本とかないかなって……]
『僕に用事があったの?』
しまった。本当はさりげなく会話をしようとしていたのに、響君に会いにきたと、そう言ってしまった。もう既に頬が熱い。
[あっ……うん。迷惑だったかな?]
『いや、全然迷惑じゃないよ。寧ろ嬉しいくらい。』
[嬉しい?]