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青い煩い、少女の情動。
第5章 視聴覚室(またの名を……)
『莉央、どうしたの?大丈夫?』
目の前で跳ねた私を不思議に思っているようだが、彼の眼に宿るのは心配の色のみである。
[大丈夫。気にしないで。]
今でも名前を呼ばれるだけで全身がキュンと鳴る。
罪悪感半端じゃない、
けど好きな人の顔見ながらイクのめっちゃ気持ちよかったなぁ……
実はお漏らしするのが恐くてまだペン抜いていない。あとからトイレで抜こうと思っているのだが……。
ボールペンを中に入れたままスパッツを上げる。
やばっ全部入っちゃった。
中にまるまる異物が存在するという未知の感覚に侵されながらも私は顔を決して下げない。
依然、響君は私の顔を怪訝な表情で窺っている。
『本当に大丈夫?顔ちょっと赤いけど』
[大丈夫っ……]
『本当に?体調悪いんだったら保健室連れていくよ?』
それは魅力的な提案だ。響君に連れられて保健室に向かう。そのシチュエーションは憧れるし、なにより2人きりになれる。保健室の絶妙な空気が何かを後押ししてくれるかもしれないし……。
しかし、私は
[本当に大丈夫だよ。心配しないで……。次の古文を乗り越えたらほぼ昼休憩だから、全然余裕っ!]
私は空元気というわけではないが、いつもよりも溌剌に答えた。しかし響君は依然、というかさっきより不思議そうな顔で私を見ている。そして
『えっ?次の授業体育だよ?』
と言った。
[え?!]
ありえない。昨日確認した時間割ではちゃんと古文だったはず……。
[ホントに?]
『うん……。昨日先生から急遽メールで授業変更のお知らせが来たんだけど、莉央は来なかった?』
やばい、昨日は買い物に全精力を注いでいたので、メールを確認する余裕はなかった。
[来てた……かも……]
『ドンマイだね、それより体操服ある?]
[うん。体操服はロッカー置いてあるから……。]
[じゃあまだ幸いだね、体操服を持ってきていなかったなら悲惨だった。]
体操服は週始めにロッカーに入れているので問題ないが、体育にはいろいろと準備が必要なので、時間が切羽詰まるのだ。どうしようか。とりあえず授業終わって急いでトイレへ直行して、ぱぱっとペンを抜いて、着替えて、グラウンドへダッシュ。私はイメージトレーニングを重ねていく。間に合う気がしない。
私は暗澹とした気持ちを抱えながら映像の終了を待つことしかできなかった。