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青い煩い、少女の情動。
第8章 布団の香り、

[ううん。そんなことないよ……。響君がいろいろ教えてくれたから……。]
『いや、莉央の視点は僕より凄いよっ。』
[いやいや、単に視点の性質の違いで、優劣はないよっ。]
謙遜ではない。私は心からそう思っている。物語構造にフォーカスするのか、文書表現にフォーカスするのか、はたまたそれ以外か。視点が近ければ良いわけでもなく、視点が高ければ良いわけでもない。どの視点でも良いところと悪いところはあるのだ。
『それでねっ。僕が思ったのは……この場面に……』
2人の談合は続いた。途中で、響君がコーヒーを淹れに行ったが、私はブラックコーヒーが飲めないタチなので、砂糖をボトンっと2つ入れて、甘めのコーヒーを楽しんだ。ブラックコーヒーはまだ苦いお年頃なのだ。
そして、数時間。
『そろそろ、寝ようか……。』
夜はすっかり更けて、時刻は0時前。楽しい時間はチーターより早く過ぎていく。響君はカップにうっすらと残ったコーヒーをくいっと飲み干して、シンクに持っていく。私もそれに追随する。
[あー、楽しかったっ。]
心の底からそう思った。学校で話す時とは違った、新鮮味のある雰囲気で、2人の会話は静寂を許さなかった。私が響君のパジャマ姿に対して、眼福眼福っと祈り始めてしまいそうだったことを除けばパーフェクトだった。これも全て突然振ってきた雨のおかげなのでとりあえず天に感謝をしておこう。
[うん。寝ようか。]
私の同意によって、会はお開きになる。
響君がトントンと本をまとめて傍にかかえる。
『あっ!……。洗面台の上に、使い捨て用の歯ブラシと歯磨き粉を置いてるからよろしくっ……。』
そう言って響君は立ち上がった。リビングに敷いてある布団を器用によけて、リビングの扉へ。
『莉央、おやすみっ。』
[響君、おやすみ。]
お互いに名前を言う必要があったのかに関しては触れないで貰いたい。そういう雰囲気だったのだ。
ガチャ、と扉が閉まる。
ぽすんっ
私は布団に飛び込んだ。

