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青い煩い、少女の情動。
第9章 曖昧な心
『ダメかな……、』

懇願するような目でこちらを見つめる響君。
その小悪魔然とした振る舞いに、NOを突きつけることなどできない。
そもそも断る気はないが。

[いいよ、]

『ほんとうっ?』

[うん、じゃあ……後15分くらい待ってもらっていい?]

『もちろん、』

[また、後で、]

『うん。』

心を弾ませた様子の響君を見て、にわかに拍動が加速したような気がした。


挨拶をして、急いで部室に駆け込む。
なんだかんだで、私が響君と話していた間にみんな片付けを済ませていたようだ。

『若宮先輩って、都野先輩と付き合ってるんですか?』

だしぬけに、後輩に質問された。

[いや、付き合ってないけど……。]

『でも、めっちゃ仲良さそうじゃないですか……さっきもなんかポカリ貰ってたし……。』

[仲は……いいと思うけど、]

『ぶっちゃけ、都野先輩のこと好きですか?』

[えぇ……。]

急に穿った質問が飛んできて、頬が勝手に赤くなる。

それを見た後輩は、口角をあげて目を細めた。

『あぁー、それ絶対"好き"なときの反応じゃん。』

[もう……、]

美琴だけでなく後輩にまで看破されてしまった。
そんなに分かりやすいだろうか。

ユニフォームを脱いで、汗を拭く。
そして、鞄を探って……全身から血の気が引いた。

[誰か、汗拭きシート貸してくれない?]

私は叫んだ。
神に縋る信者のように、両膝を地につけて懇願した。
さっきの後輩が、意味を理解してニヤニヤしているのが横目に見える。ちょっと腹立つけど今はそれどころではない……

『先輩どうぞっ、』

別の後輩……いや"神"が哀れな私に汗拭きシートを恵んでくれた。良き後輩に巡り会えたことに感謝。

[ありがとうっ、]

『あれ……都野先輩の話ですか……?』

『皆んな響君……都野君のこと知ってるの?』

関わりとかあるのかな……、

『あぁー、都野先輩は私たちの間でも……結構人気ですね。若宮先輩、気をつけておいて方がいいですよ……。』

そうなんだ……後輩にも人気……。
なんだかますます自信がなくなってきた。


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