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妻の過去 ~知りたい夫と知る男~
第5章 過去への扉
どれくらいの時間が経っただろうか。
私はかなり酔ったふりをしていたが、その間
妻と川島の会話は固さがなくなり、軽い冗談まで混ざるようになっていた。

どちらかというと、妻は私より川島と話す方が多くなっている。
それが久しぶりだからなのか、他に理由があるからなのか、まだ分かりません。

ただ川島をみる妻の目が、微かに艶をはらんでいるような気がしました。
私の思い違いであれはいいが…。

ここで私はトイレに立ちました。
スマホで受信できる盗聴機の電源はONにしてきているので、
私がいない間の2人の会話を聞こうと思えばきけるのですが、
私は受信するのをやめておきました。

それはリビングからトイレは直接見えないものの距離が近いため、
よほどヒソヒソと話さないと
聞こえてしまうのを妻も知っているからです。

私は水洗を流そうとレバーに手を掛けたところで、
思い止まりました。

二人の会話がトイレまで聞こえないのです。
言いましたように、よほどヒソヒソ話をしないとトイレまで聞こえてしまうのですが、
さっきまでの二人の声の大きさであれば、
聞こえてくるはずです。

それが聞こえない。なぜだ…。

私はトイレをながさず、そっと扉を開けてリビングの様子を伺うように
ゆっくりと動きました。

リビングを覗き込んだ私の目に、衝撃的な光景が見えました。
いや、人によっては特にそうではない、普通かもしれません。

しかし私の目には衝撃的に見えました。

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