この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
黒薔薇学園の白い百合たち
第9章 土方先生の実家にて
再び長い廊下を歩きながら
私たちは玄関へと向かった。
来訪した時は私なんか眼中にないという感じだった良子さんと呼ばれる婆やさんが
スススッと私に近づいた。
「ようございました…」
「はい?」
「あなた様は奥さまに気に入られたようです」
「そうなんでしょうか?」
半信半疑でした。
お会いしてからランチ中も
私に対してはあんなにツンケンな話し方でしたし。
「来客とお食事なんて
あの方は滅多になさらないですからね
それに、お天気の事も私に訊ねてらっしゃったでしょ?
あれはすごく機嫌の良い証拠ですわ」
感情を表に出さない人か…
きっとファッション界をリードしているという自負が、心に甲冑を着せてしまっているのかしら…
「私も…大層あなた様を気に入りました
だって…お二人はとてもお似合いですから」
玄関を出ると黒塗りのベンツが停まっていた。
土方先生は、さも、当然というように
その車に乗り込んだ。
「粗相のないようにお見送りしろとの命令ですので…淑子先生のお車を使わせるところなんて、先生があなた様をお気に召しているからですよ」
さあ、どうぞ、お乗りくださいと
運転手さんもにこやかな笑顔で私を迎えてくれた