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黒薔薇学園の白い百合たち
第10章 一人だけの訪問
どうぞお入りくださいませ
「ばあや」が仰々しく扉を開けてくれたので
私は部屋に足を踏み入れる前に
「お招き頂き、ありがとうございます」と
頭を下げた。
そして、顔を上げて室内を見て
初めてそこに淑子さん以外に二人の男が
テーブルに着席しているのを確認した。
「まあまあ、そんなに堅くならないで
今夜はね、主人と息子を紹介しようと
わざわざ、あなた一人を招いたの」
「やあ、あなたが由里さんですか
昨日は留守にしていてすいませんでしたな」
わしがこの土方家の主(あるじ)の義雅(よしまさ)です。と、柔和な笑みで会釈してくれた。
「そして僕が…」
そう話し出したもう一人の男を見て
思わず私は『まあ!雅人さんも来ていたの?』と
声を出しそうになった。
「僕が雅人の兄、義明です」
そのように名乗ってくれたので
それが雅人さんではないことがわかった。
「驚かれましたか?僕と雅人は双子なんですよ」
そのように告げてくれたので
『やはり双子だったのね』と
私は納得した。
顔は雅人さんに瓜二つなのだけれど
がっしりした体格の雅人さんとは違い、
なんというか一回りほど体格が違っていた。
「あなたの事を二人に話したら
是非ともお会いしたいと言うものですから
無理を言ってあなたにご足労いただいたの」
そのように淑子さんは釈明しながら
さあさ、お入りなさい、
由里さんのお顔を二人に見せておやりなさい。と
お義母様は私に着席を勧めた。