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黒薔薇学園の白い百合たち
第12章 由里の失踪
未明の3時…
夜明け前の夜空が一番暗いという。
そんな夜道を
まるで夢遊病者のように
フラフラと高台にある屋敷からの坂道を
由里は下っていた。
窓から抜け出したので
途中でスカートが造園の木の枝に引っ掛かり
横一文字に裂けていた。
ピラピラと膝に絡まりつく破り目が鬱陶しくて
手でおもいっきり引き裂いた。
スカートの丈が極端に短くなり
まるで超がつくほどのミニスカートに生まれ変わった。
『私も、この洋服のように生まれ変わらなければ…』
大通りに出てタクシーを拾うと
急いで自宅のマンションに逃げ帰った。
あの屋敷の人たちが目を覚まして
私を探しだそうとする前に
どこか遠くへ行かなくては…
私は身の回りのものだけをトランクに詰め、
『家財道具などを処分してください』と
無理なお願いをしたためたメモを
隣の沢渡くんの郵便ポストに投函した。
。。。。。。。。
「由里ちゃ~ん、ハンバーグ定食、三番テーブルにお願いね」
「はぁ~い、かしこまりました」
夜明け前に東京を抜け出して
私は高校の時の親友である柏木留美子を頼って
一人で大阪に来て住み込みで働かせてもらうようにしました。
「ちょうど、良かったわ
うちの実家の食堂な、近くでマンションの建設が始まってから、現場の人たちがぎょうさん店に来てくれるよってにてんてこ舞いしとってん」
柏木留美子は私が東京を離れた理由も聞かずに
実家の食堂の仕事を紹介してくれた。
「留美子の友達やったら
面倒を見んわけにはいかんやろ、
よっしゃ。うちで働いたらええがな」
留美子の父親も面倒見のよい男で
留美子の弟が使っていた部屋が空き部屋になっているので、そこでよければ寝泊まりすればいいと、
部屋まで使わせてもらえることになった。