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黒薔薇学園の白い百合たち
第12章 由里の失踪

「由里ちゃんやっけ?
ほんまによう来てくれたわ
親子二人だけでは、どうにもならんとこやったさかいに」

留美子の父親の圭介はそう言って私に向かって拝む動作をした。

「よしてくださいよ
私こそ、急に大阪に来て面倒見てくださいなんて
図々しいお願いをしたのに…」

「いいの、いいの、
お陰でこっちも助かったんやから」

「ほんまや、人間、誰しも持ちつ持たれつや
他のええ仕事が見つかるまで
いつまでもここに居たらええがな」

夕方の仕込みをしながら
留美子の父親の圭介はそのように言ってくれた。

「由里が、こないして来てくれたんは
どないしようもない理由があるんやろうけど
心配せんかてええからな」

「ありがとう…本当にありがとう…
その事なんだけど…お店が終わったら時間を作ってくれる?」

ここまで世話になっているのだから
留美子にだけはちゃんと理由を話しておくべきだろうと思った。

そして夜の九時…

ようやく怒涛の一日が終わりを告げた。

「疲れたやろ?
近所にスーパー銭湯があるさかいに
あんたら二人で汗を流してきたらええわ」

あとの片付けは儂(わし)一人で充分やさかいに
つもる話しもあるやろうしな

そう言って留美子の父親である圭介は
気をきかせて二人だけの時間を与えてくれた。


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