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黒薔薇学園の白い百合たち
第12章 由里の失踪
「おじさんは…いい人がいないんですか?」
留美子から母親は
幼い頃に病で他界したと聞いてはいた。
「そやなあ…気になる女(ひと)はいるけどな
そやかて、こんな小さな食堂に嫁いで苦労を共にしたるっていう女(ひと)は、なかなかおらんのよ」
そのうち、二階からギシギシっと
愛の行為が始まった軋み音がし始めた。
「こんな甲斐性なしの父親のせいで
あいつが幸せになれんというのは
情けない話や…」
圭介は、ちょっぴり涙を浮かべながら
ビールを浴びるように呑んだ。
留美子の父親が言う気になる女(ひと)というのは
すぐにわかった。
圭介は「この人だ」と言ったわけではないけれど
彼女が昼食を食べに食堂に現れた途端、
圭介の威勢が急に良くなって
厨房からチラチラっと彼女ばかりを見ていた。
彼女の方も満更ではないようで
こちらもチラチラと厨房に目をやって
料理をこしらえる圭介を
うっとりとした眼差しで見つめていた。
「ねえねえ、留美子…
あの女性って?」
彼女の素性が知りたくて
私は留美子に尋ねた。
「えっ?ああ、清美さんよ
ご近所に住むバツイチさんやわ」
『あら?バツイチさんなの?
それじゃあ、圭介おじさんとくっつくのに
何の支障もないじゃない』
どうやら両名とも恋愛には奥手で
互いに意識はしているものの
どちらも声をかけてくれるのを待っているようでした。