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黒薔薇学園の白い百合たち
第12章 由里の失踪

「ご注文、お決まりでしょうか?」

コップに水を入れて持っていき、
私はさりげなく女性を観察しました。

メイクはいたってノーマルで派手ではない。
ネイルもしていなくて爪も綺麗に整えていた。
そこから受けるイメージは家事をそつなくこなす女を想像させた。

「すいません、きつねうどんをお願いします」

とても涼やかな声…

もし私が男なら
絶対に惚れてしまいそうです。

「きつねうどん一つ!」

私が厨房に向かって注文を通すと
「あいよ!けつねうろん一丁ね!」と
とんでもなく大きな声で圭介おじさんは張りきりだした。

けつねうろん?何よそれ?と
吹き出しそうになると、すかさず留美子が
「けつねうろんって聞こえるでしょ?
私たちには、ちゃんと、『きつねうどん』って聞こえてるわ」と大阪弁の不思議さを教えてくれた。

へえ~…そんなんだ…
大阪弁って面白いわ…

多分、これからも会話していく上で
何それ?っていう単語がいっぱい出てくるんだろうなあと
ここ大阪で暮らしていく楽しみが増えました。

私は小声で「留美子、あの女性と圭介おじさんって…お似合いじゃない?」と聞いてみた。

「あ、やっぱり由里も、そないな風に感じたん?」

そやねん、私も彼女とお父ちゃんはお似合いやと思ってるねん。と
留美子も父と、その女性をくっつけようとしているのを感じた。



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