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黒薔薇学園の白い百合たち
第12章 由里の失踪

「あなたとこうして二人で歩くのって初めてやわ」

「えっ?そうかい?
そんなわけないやろ」

「ううん、初めてやで…」

「そうか?周りから見たら
儂(わし)らは夫婦に見えるやろか?」

夫婦というワードを口にしてしまったので
二人に気まずい空気が流れる…

ろくに会話もしないうちに
清美のアパートに着いてしまった。

「うちのアパートここやねん」

もっといろんな会話をしたかったのに
口下手で上手く会話を引き出せなかった自分を
圭介は悔やんだ。

「お、おう…そしたら、戸締まりはしっかりするんやで」

そう言って手を振って格好よく立ち去ろうとしたが
思いの外、酔いが回ってしまいフラついた。

「あ!危ないわ!」

転んではいけないと
清美がしっかりと圭介の腰に抱きついた。

無言で微妙な空気が流れてゆく。

「あの…酔いが醒めるまで…
よかったら…うちの部屋で休んでいかへん?」

「いや…それは…」

女性の一人住まいに上がり込むなど
もってのほかだと固辞しようとしたが
どうにも足元がおぼつかない。

「じゃあ…トイレだけ貸してもらおうかな」

そう言ってトイレを貸してもらったものの
便器を見た途端にムカムカしてきて
思わず便器を抱いておもいっきりリバースしてしまった。

『情けない…格好わるい…最悪やん』

ひととおり吐いてしまうとスッキリすると共に
きっとリバースの音を聞かれたであろうし
嫌われてしまったと、ションボリしながらトイレから出た。

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