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黒薔薇学園の白い百合たち
第14章 土方先生の落ち込み
なるべくゆっくりと車を走らせていた。
その間に雅人さまに冷静さを取り戻してほしかったからだ。
こんなときに限って道路は渋滞せず
あっという間に高台の土方家に到着してしまった。
「あんたが俺を連れてきたというのは黙っていればいい。
俺が単身でここに乗り込んできたんだ
いいね、そういうことにしておきなさい」
『自分が連れてきたのがわかれば
奥さまから叱責されると知っているのだ…
ああ…やはり義明さまでなく雅人さまに跡を継いで頂きたいものだ』
そう思いながら屋敷の中に入って行く雅人の背中に向かって、黒岩は深々と頭を垂れた。
玄関の扉がバン!っと開いたものだから
メイドを勤める婆やの良子が慌てて飛び出してきた
「雅人さま!ご帰宅の事を伺っておりませんでしたが…」
まるで家人ではなく
突然の訪問者をこれ以上前に進ませてはなるものかと雅人の前に立ちふさがる。
『なんだい!どいつもこいつも俺がここに来ちゃいけないというような素振りをしやがって!』
どけっ!とばかりに
土方は良子の両肩を掴んでぐいっと押し退けた。
「いけません!雅人さま!
アポなしで奥さまにお会いできません!」
ヒステリックな声で前に進もうとする土方を
良子はおもいっきり拒んだ。