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黒薔薇学園の白い百合たち
第14章 土方先生の落ち込み
婆やの良子が土方の手をとって
追い返そうとするが
お構いなしに彼女を引きずるようにして
土方はリビングの扉を開けた。
部屋の片隅で安楽椅子に背もたれて
瞑想に耽っていた淑子が驚いたように部屋に飛び込んできた土方と良子を見た。
「すいません!奥さま!!
雅人さまをお引き留めしたんですが…」
良子が慌てて淑子に非を詫びた。
「いいのよ…良子さん、あなたは下がってらっしゃい」
淑子に強い口調で言われて
「申し訳ございません」と
再度、頭を下げてリビングから出ていった。
「招かざる客人ね…
呼び出した覚えはないんですけど」
淑子は爬虫類のような冷たい視線を
容赦なく土方に浴びせかけた。
「何故、黒岩に由里の部屋を見張らせる!」
「見張らせる?
人聞きが悪いわね!
黒岩には、あの子をここへ連れてきなさいと命じているだけよ」
「それは御愁傷様だな
彼女はもう、あの部屋にはいない」
「どういう事かしら?」
「失踪してしまったんだよ!
あんた、由里に何をした!?」
「何もしていないわ
そうねえ、強いて何かをしたとしたら
義明にあの子と寝させたぐらいかしら?」
「寝させた?」
あんたにあの子は勿体ないわ
あの子は義明の嫁にすることに決めたのよ
だから諦めなさいと
まるで犬でも追い払うかのように
手でシッシっと出ていけと合図をした。