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黒薔薇学園の白い百合たち
第15章 由里との再会
生徒たちの体調を気遣う言葉には
ピクリとも反応しなかった土方だったが
香代が「由里ちゃんを見つけたわ!」と
由里の名前を出した途端、
ガバッとうつむいていた顔を上げた。
「由里がどこにいるのかわかったって?」
死んだ魚のような目に光が浮かび
怖いほどの目力で土方は香代を見つめた。
「そうよ、見つかったの!
先生、落ち込んでいる場合じゃないわ
迎えに行ってあげてよ」
クラス委員の瞳がクラス全員を代表して
土方の腰を上げさせようとした。
一瞬、光を宿した土方な目が
すぐさま光を失い顔を伏せた。
「彼女は僕の元から去ったんだ…
もう今さらどう足掻いてみても仕方ないんだ」
久しぶりに土方の声を聞いて
クラス全員が驚いた。
それは、授業中に叱りつける威勢のよさではなく
まるでこの世に幽霊がいるのなら
きっとこんな声なんだろうと
そう思わずにはいられなかった。
愛実が情けない土方の様子に我慢できなくなって
土方の前にひざまずくと
その頬を思いっきりビンタした。
「あんたの事なんてどうでもいいのよ!
私たちが由里ちゃんを必要としているの!
先生なら…私たちの担任なら…
生徒のために立ち上がりなさいよ!」
愛実の言葉に
全員が「そうだよ!俺たちのために、迎えに行ってくれよ!」と土方に向かって頭を下げた。