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黒薔薇学園の白い百合たち
第15章 由里との再会
小一時間後、
土方は新幹線の品川駅のホームに立っていた。
荷物は小さなディパックひとつだけ肩に担いでいた。
本当に着の身着のままという感じで
落ち込んでいた数日は髭も剃っていなかったので
無精髭が顔の半分を覆っていた。
少しは小綺麗にした方がいいと
愛実たちが言ってくれたが
少しの時間も土方には勿体なかった。
「これ、由里ちゃんがいるという食堂のアドレスよ」
香代がくれたメモを穴が開くほど見つめる。
ここに由里がいるのだ…
そう思うと、このまま新幹線のレールの上を
今すぐ走って行きたい気分になる。
日本が世界に誇る超高速の新幹線だが
大阪までの道のりがとても長く遅く感じた。
何かの手違いで辿り着いたら由里は居なかったという結末になるのではないかと
気持ちばかりが焦りだす。
大阪の地に着いて
駅からタクシーに飛び乗ってメモの住所をドライバーに告げる。
「この時間やったら地下鉄の方が早いんとちゃうかなあ」
商売っ気のないドライバーなのか
それとも親切なのか
せっかくの乗客なのに
わざわざ地下鉄での行き方をメモにしてくれた。
「すいません、ありがとうございます!」
土方はドライバーに礼を告げて
地下鉄に飛び乗った。