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黒薔薇学園の白い百合たち
第15章 由里との再会

地下鉄を乗り継いで
土方は由里が住んでいるという街に佇んだ。、

大阪ということで大都市を予想していたが
道路の道幅は狭く
歩道は我がもの顔で自転車が歩行者にぶつかりそうになりながら走り回っている。

東京の下町のような感じでもありながら
行き交う人々の足並みはせっかちに足早に歩いていて、独特な雰囲気を醸し出していた。

『ええっと…この辺りのはずなんだだ…』

スマホのナビは「目的地付近に到着しました」と
無機質な案内をしてくれた。

『もしかして…あの店?』

土方は駐車場完備の定食屋をイメージしていたが
ほんとに普通の一軒家に「めし」と書かれた暖簾が風にたなびいていた。

ガラガラ…

引き戸を開けて土方は驚いてしまった。
こんな殺風景な店なのに
とんでもなく繁盛していて
満席に近い状態だった。

足を踏み入れるべきかどうか迷っていると
こちらに背を向けてテーブルを片付けている女性が
「お一人様ですか?相席でよろしいでしょうか」と
こちらを振り返らずにテーブルを布巾で拭きながら声をかけてきた。

その声に土方は体が震えた。

こちらに振り返らず顔を見ずとも
その声を忘れるはずがなかった。

「由里!!」

思わず土方は叫んだ。

テーブルを拭いていた女性も
その声を忘れたことがないというように
ビクッ!と背中が揺れた。

そして、信じられないという顔をこちらに向けながら「雅人さん…」と、先ほどまでの威勢のいい声とは対照的に、か細い声で土方の名を呼んだ。

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