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黒薔薇学園の白い百合たち
第15章 由里との再会
「あ、どうぞ楽になさって下さいね
すぐにお茶をお持ちしますわ」
久しぶりに留美子が標準語でそう言った。
部屋を出ていく前に私に小声で
「ちゃんと話し合うんやで」と
背中を押してくれた。
「由里…久しぶり…」
他に言うことがあるだろうと思いながらも
そんな挨拶でお茶を濁す自分を土方は恥じていた。
久しぶりと挨拶をされて
ようやく私は顔を上げて雅人さんの顔をしっかりと見た。
昼間は無精髭だらけでわからなかったけれど
ずいぶんと雰囲気が変わっていた。
「少し…痩せられました?」
そんな事を言ってる場合ではないのに
なぜかありきたりの挨拶になってしまいました。
しかも、敬語で話している自分に私自身が驚いてしまいました。
すぐそこに愛しい男が座っているのに
何故だか、とても距離が離れていると感じてしまいます。
見えないベールが二人の間に垂れ下がっているような感覚…
ああ…別れる恋人同士って
こんな風に距離を感じて見えないベールで互いの心をガードしてしまうのねと
私は感じずにはいられませんでした。
「教育実習…どうする?」
「あ…今さらもうどうでもいいかな…なんてね」
無断で何日もお休みしているのだから
きっと不合格よね…
そんなことはわかっている。
自分で決めたことなんだもん後悔はしていない。
「じゃあ…教師の夢も諦めるのかい?」
「そうね…当然そうなるわよね」
「僕との結婚も白紙に?」
雅人さんの視線がチラッと私の左手に向けられたのがわかりました。
私ったら…未練がましくリングを嵌めたままでした。