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黒薔薇学園の白い百合たち
第15章 由里との再会
ペンを握ると
「本当に僕でいいんだね?」と
念を押すように雅人さんは私に尋ねた。
「私、この日のために生きてきたと思う」
雅人さんの妻になれるのだと
私は体がカァーっと熱くなった。
手が震えているのか
いつも黒板に書く綺麗な文字に比べて
小学生かと思うほどの汚ない文字で雅人さんは署名してくれた。
「さ、今度は由里の番だよ」
スッと私の目の前に婚姻届がペンと一緒に差し出された。
雅人さんの字の汚なさを貶してしまった私ですが
いざ、ペンを手にして署名しようとすると
涙で視界が滲んで
これまたとんでもなく汚ない文字で署名した。
「よっしゃ!これで後は提出するだけで
二人は晴れて夫婦やわ!」
あ、そや!あんたら判子持ってるか?
肝心なとこが抜けてるやんか!と
捺印していないことに留美子が気づいた。
ちょっと待っときや
留美子は親友の愛の誓いの瞬間に立ち会えて
嬉し涙を流しながら店の方に向かった。
「お父ちゃん、吉田の判子屋さんってまだ開いてるやろか?」
「アホ言いな、今はもう11時前やで
とっくの昔に店を閉めとるわ!」
判子がいるんか?
明日の朝でええんやろ?
何のために判子がいるのか理解していない圭介は
清美さんと晩酌しながらのんびりと答えた。
「あかん!こういうことは善は急げって言うやんか」
そう言って由里と雅人が書いた婚姻届を
圭介の目の前に突き出した。