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黒薔薇学園の白い百合たち
第17章 帰京
「え~…では、断腸の思いですが
土方先生には、この学園を」
バタン!!
学園長の「去っていただきましょう」と発した声が、ドアをおもいっきり開けた音でかき消された。
「なんですか!君は!」
そこに立っていたのは
2年C組のクラス委員である相楽 瞳が重そうにプリントの束を手にして仁王立ちしていた。
「これを受け取っていただきたいのです」
失礼なのは重々承知の上で
会議に乱入させていただきました。
そう言うと瞳は
入室許可も得ないまま
スタスタと学園長を目指して歩みを進めた。
「待ちなさい!
何を手渡そうとしているのですか?」
学園長に差し出す前に
里中教頭が瞳が抱かえているプリントの束を横取りした。
「嘆願書?」
一枚10名の署名がびっしりと埋まっていて
それが30枚ほど連なっていた。
「全校生徒の署名です」
瞳は藁にもすがる思いで
里中教頭に目を通して欲しいと訴えた。
「2年C組全員で手分けして、全校生徒に書いていただきました」
『よくまあ、数日で全校生徒にお願いに回ったものね…』
嘆願書の事は自宅で居候させている誠から
それとなく聞いていた。
嘆願書でも書いてもらえば?とC組の生徒にけしかけたものの、本当に書いてもらっているのだとわかって井津美は嬉しくなった。
「井津美…あのね、2年C組の担任で土方って先生がいるだろ?
彼、今、無断欠勤なんだって?
2年C組の連中が処分を軽くしてくれっていう嘆願書を僕のところに持ってきたんだ」
「まあ!嘆願書?」
「あいにくと僕は土方先生に物理を教えてもらったことはないけど、そうやって嘆願書運動をしてもらうぐらいなんだからきっといい教師なんだろうね」
「うふふ、まあ、そうね
でも、女にはめっぽうだらしないけどね」
「僕、そういう教師は学園に必要だと思うんだ
だかは僕は快く署名したよ
だからさあ…井津美がなんとか穏便に済ますようにして上げてよ」
そう言って誠は井津美にキスをした。
『ああん、もう!
この子がそう言うのなら私が力になってあげなきゃ…』
職員会議が開かれてから
嘆願書を持ってくるのを
里中教頭は今か今かと待ち構えていたのだった。