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黒薔薇学園の白い百合たち
第17章 帰京

『ほんとにもう!持ってくるのが遅いわよ』

里中教頭は受け取った、いや、奪い取った嘆願書を
学園長に差し出した。

「学園長…生徒って私たちが知らぬところで
どんどん成長しているのね
こんな嘆願書を書いてもらうための労力を
少しは勉学に回せばいいのにねえ」

でも、こんなものは役に立たないわ

里中教頭の声が会議室内に響き渡った。

「そうそう、こんなものを提出したところで
処分を軽くするわけにはいかないからね」

里中教頭の言葉を受けて
学園長は鼻息を荒くした。

「処分を軽くするも何も
土方先生はインフルエンザでお休みしていただけなんですから」

「はあ?」

思いもよらぬ里中教頭の言葉に
学園長は目を白黒させた。

「土方先生、あなた、インフルエンザで寝込んでしまい、高熱に魘(うな)されて学園にお休みをさせてくださいっていう連絡が出来なかったのよね?」

「え?、あ、いや…」

何の事だかさっぱりと要領を得ず
土方も言葉に詰まってしまった。

「しかしだねえ、教頭先生、
彼は無断欠勤している間に
教育実習生の日向先生と婚姻届まで出していたんですよ」

「わかるわ、寝込んでしまうと独り暮らしって心寂しくなるのよね
私もずっと独身だから土方先生の気持ちはよく理解できるわ
病気になった時に初めて大事な人の存在に気づくのよねえ」

と言うことで!と
里中教頭は学園長を睨み付けるように
「病気だったんですから
処分も何もありませんわよねえ。
病気になって気弱になれば
伴侶も求めたくなるってもんです」

なので、処分も何もなしです!
これにて、職員会議はお開きとします!!

学園長は開いた口が塞がらないようで
ただ、アワアワと狼狽えていた。

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