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黒薔薇学園の白い百合たち
第17章 帰京

その頃、土方家では…

アトリエで新作ワンピースのデッサンをしていた淑子だったが、どうにもペンが進まない。

淑子は双子の兄の義明の事を考えていた。

『あの子は自分で物事を考えようともしない…』

由里を寝取って、それで全てが上手くいくと考えている。
いや、何も考えていないというべきか…

由里が失踪したと伝えても
血眼になって探そうともしない。
まるで一夜のアバンチュールを楽しめたから
それでいいとさえ思っているのではないかと思うほど呑気だ。

おそらく心の底から由里を求めていないのだろう。

女なんていくらでも手に入ると思っているのか…

何としてでも由里をこの家に迎え入れたい。
将来的に土方家を安泰に導いてくれるのはあの女以外に考えられなかった。

『ああ…雅人…
何故あなたは家を飛び出したの…
あなたではなく義明が家を飛び出てくれれば良かったのに…』

双子ゆえに同等に扱って
贔屓なく同じように育ててきたつもりなのに

そんな思考を止めるかのように
スマホに着信があった。

ディスプレイには『黒岩』と表示されていた。

見つかったのね!
由里を連れ戻すことが出来るのね!

淑子は意気揚々と通話をタップした

- 奥さま…黒岩でございます… -

ん?どうしたのだろう…
この暗い声は…
いや、声は沈んでいるものの
その根底には喜びの意思さえ感じる。

「見つかったのね?由里を見つけたのね?」

- はい…先ほど由里さまと遭遇いたしました -

「連れてきなさい
義明はもう婚姻届にサインしてあるから、後はあの子に署名させるだけよ」

- はあ…それが実は… -

黒岩の返事に淑子はイヤな予感がした。

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