この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
黒薔薇学園の白い百合たち
第17章 帰京
「何なの?ハッキリおっしゃい!」
淑子の剣幕に
黒岩はますます声をひそめて
聞こえないかのようなか細い声で
- 日向さまは…ご入籍なされました… -
はぁ?何をバカな事を言っているの
婚姻届を提出するのを阻止するために
区役所の係の者たちに金を渡して
日向由里名義の婚姻届が出たら
受け付けずに連絡するようにしているもの
「出せるはずないわ」
- それが…その…大阪で提出されたようでして… -
えっ?地方で提出した?
迂闊だった…
由里と共に雅人も見張っておくべきだった!
腹立たしくて淑子は
スマホを壁に向かって投げ捨てた。
「やられたわ…さすが、私が見込んだ女ね」
怒りで鬼の形相だった淑子から
スーッと憑き物が落ちたように柔和な顔になった。
これでいいのかもしれない
愛し合う二人は誰の邪魔も出来ないって事なのね
「おめでとう…雅人、由里…」
少しは義明も世の中の全てが思い通りにならないことを知ってくれるかもしれない
「やれやれ…また義明の花嫁候補を探さなければね」
-奥さま!奥さま!
本当に申し訳ございません -
壁に投げつけたスマホから
小さな声が漏れ聞こえた。
淑子はスマホを拾い上げると
「仕方がないわよね
黒岩、本当にご苦労様でした
ありがとうね」と黒岩に労いの言葉をかけた。
その言葉を聞いて黒岩は
誰もいない景色に向かって深々と頭を下げた。