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黒薔薇学園の白い百合たち
第1章 教育実習
「日向先生、わかったでしょ
うちのクラスは手強いですよ」
「ええ…少しばかり圧倒されちゃいました」
挨拶を終えて教員室に戻って
物理の時間割りが午後からなので
私たちはコーヒーを飲んで一息つきました。
「授業中も隙を見せるとヤジがバンバン飛んで来るので、決して隙を見せないようにね」
土方先生は教科書を開いて
ここまで教えていますと
現在の進行具合を教えてくれました。
いざ教科書を開くと
ドキドキして心臓が早鐘を打ち始めました。
「大丈夫?かなり緊張してるけど…
安心して授業中は僕が教室の後ろにスタンバイしておくから」
土方先生の優しさに
生徒のヤジではないけれど
私、土方先生に惚れちゃいそうでした。
「あの…土方先生は…
ご結婚されているんですか?」
「結婚しているように見えますか?」
そう言って左手の薬指を私に見せてくれた。
その指にはリングはおろか、
指輪の後さえなく綺麗なままでした。
「こんな情けない男に惚れてくれる女性なんていませんよ」
自虐的にそう言う土方先生を見つめて
『ここに一目惚れした女がいますよ~』と
私は言葉に出さずに
精一杯可愛い笑顔を彼に送りました。