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ラズベリーの甘い誘惑
第1章 王子様はお姫様を夢見る。
王子様はその衝動のまま、今度こそ立ち上がりました。周りにいる姫君達が、期待から黄色い声を上げました。それに一瞥くれる間もなく、目を輝かせて待つ大勢の姫君達を掻き分け、その女の子の前までたどりついたのでした。

女の子は、目の前まで王子様が迫り、緊張から小さくしていた身体をますます小さく縮こまらせ、真っ赤にしていた頬を更に真っ赤に染め上げ、下を向いていた顔を更に下へと下げました。折角、王子様が目の前にいるのですから、笑顔でも華やかに浮かべて名前を名乗り、少しでも印象付けるべきなのでしょうが、女の子は小さな身体を震わせて、ただそこに立っていました。

そんないじらしい態度に、王子様の嗜虐心は煽られるばかりです。今すぐここで押し倒して、大勢いる観客に女の子の痴態を晒してしまい衝動を、懸命に堪えます。

「来い」

余裕のない王子様は、普段の優しい声と雰囲気とは一変、きつく冷たい声で簡潔に命令しました。王子様は本当に余裕のよの字も持ち合わせていなかったので、女の子の返答を聞く前に、あっと言う間に小さな身体を抱き上げて、舞踏会が行われている大広間から足早に去っていきました。

残された姫君達は、一変した王子様の様子に目を白黒していました。が、あれは気のせいだったのだろうと、己を納得させ、選ばれなかったことに深く溜息をついたのでした。

今日は王子様は早々にお嫁さんを決めてしまったので、舞踏会も早々に打ち切られました。呼び集められた姫君達は各々迎えの馬車に揺られ、夜の道を帰っていきます。舞踏会の片付けも手早く澄まされ、大広間から明かりがゆっくりと消されていきました。

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