この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
全部、夏のせい
第7章 初めての夜とその後〜エクス、マルセイユ、パリ

中には、大振りな指輪と小さい封筒が入っていた。
「この指輪は、僕の第一夫人の証。
元の妻から返して貰った。
僕にもしものことがあったら、
この封筒を開いて?」と言った。
「えっ?
もしものことって?」
「もしものことだよ。
ほら、例えば今回、別々に飛行機に乗るでしょ?
それで、僕の飛行機が落ちるとかさ…」
「やだ。
そんなこと、考えたくない…」と言いながら、
私は泣いていた。
「だから、もしものことだよ。
そんな時に…。
マーサを万が一、独りぼっちにしてしまうようなことになった時に、
マーサが、困らないようにしたいから。
絶対にこれ、無くさないで?
僕も同じ箱に、指輪と封筒を入れて持ち歩いてる。
あ、その中にね。
マーサの手首のブレスレット用のクロージャーも入れたんだ」と言って笑った。
「もしものことなんて、
そうそう、やってこないよ?
車の事故の方が、余程、確率は高いんだから」と言ってキスをすると、
「そろそろ空港に行く支度をしないとね?」と言った。
私は手持ちのバッグに使い始めていたケリーに、
その箱を入れながら、アラムに無理して微笑んだ。
多分、可愛くない顔をしていたと思った。
立ち上がろうとしたら、
アラムの携帯が鳴った。
フランス語ではない言葉で、ボソボソと話をして、
電話はすぐに切れた。
「アリだった。
見送りに来たいからって、フライト時間を訊かれたよ?」と笑った。
「この指輪は、僕の第一夫人の証。
元の妻から返して貰った。
僕にもしものことがあったら、
この封筒を開いて?」と言った。
「えっ?
もしものことって?」
「もしものことだよ。
ほら、例えば今回、別々に飛行機に乗るでしょ?
それで、僕の飛行機が落ちるとかさ…」
「やだ。
そんなこと、考えたくない…」と言いながら、
私は泣いていた。
「だから、もしものことだよ。
そんな時に…。
マーサを万が一、独りぼっちにしてしまうようなことになった時に、
マーサが、困らないようにしたいから。
絶対にこれ、無くさないで?
僕も同じ箱に、指輪と封筒を入れて持ち歩いてる。
あ、その中にね。
マーサの手首のブレスレット用のクロージャーも入れたんだ」と言って笑った。
「もしものことなんて、
そうそう、やってこないよ?
車の事故の方が、余程、確率は高いんだから」と言ってキスをすると、
「そろそろ空港に行く支度をしないとね?」と言った。
私は手持ちのバッグに使い始めていたケリーに、
その箱を入れながら、アラムに無理して微笑んだ。
多分、可愛くない顔をしていたと思った。
立ち上がろうとしたら、
アラムの携帯が鳴った。
フランス語ではない言葉で、ボソボソと話をして、
電話はすぐに切れた。
「アリだった。
見送りに来たいからって、フライト時間を訊かれたよ?」と笑った。

