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全部、夏のせい
第8章 暗雲〜東京、横浜、そして…

気付いたら病院のベッドに居て、
アラムと祖母が心配そうな顔をしていた。
「えっ?
ここは…?」
「病院よ」
「赤ちゃんは?」
「ちょっと危なかったみたいだけど、もう大丈夫よ。
でもね。
真麻ちゃんは暫く絶対安静にですって?」
アラムが上を向いて涙を堪えながら、
「ああ!神様!」と呟くように言った。
「多分、強いストレスのせいで、
切迫早産しそうになったそうよ。
もうちょっとお腹に居て貰わないとね?」と、
祖母は少し戯けた顔で言うと、
「わたくし、飲み物を買ってきてから、
ナースステーションに声を掛けてくるわね?」とウィンクをして席を立った。
二人きりになると、アラムは私の髪を撫でて、
顔中にキスをしながら、
「本当に良かった!
マーサとムスコを、両方なくすと思ったよ」と、
涙を流す。
「えっ?
ムスコ?」
「あ…。
ごめん。
途中で看護婦さんが口を滑らせたんだ。
男の子だって」
「そう。
だったら、アラムに似た、
逞しくて優しい王子さまね?」と言うと、
アラムは嬉しそうな顔をする。
「自宅に戻ると、ついつい動いてしまうだろうから、
暫く入院した方が良いって。
僕、毎日、ここに来るよ?
それと、結婚の届出も提出しようね?」と言って、優しく笑った。
入院中は、本当に毎日のように、
祖母とアラムがお見舞いに来てくれた。
そして、アラムは4月から日本の事務所で仕事を始めることが出来ることが正式に決まった。
今回は書類もきちんと揃って、
日本の役所とアラムの国の領事館に、
婚姻届を提出して受理された。
アラムは、私の姓を名乗ることを選んだ。
私の方は、本を持ち込んで、勉強にも集中出来て、
良かったのかもしれない。
実家の母も、こっそりお見舞いに来てくれて、
婚姻届にも署名してくれたけど、
父は一度も会いに来てくれることはなかった。
退院後、4月に大学の授業が始まった時は、
履修届だけ車で提出に行って、
択一試験を受けた一週間後に出産した。
出産は、逆子だったことと、
思いの外、赤ちゃんが大きかったので、
帝王切開になってしまったけど、
大きいお陰で最初からしっかりしていて、
祖母と母いわく、
「とても育てやすい」ということだった。
アラムと祖母が心配そうな顔をしていた。
「えっ?
ここは…?」
「病院よ」
「赤ちゃんは?」
「ちょっと危なかったみたいだけど、もう大丈夫よ。
でもね。
真麻ちゃんは暫く絶対安静にですって?」
アラムが上を向いて涙を堪えながら、
「ああ!神様!」と呟くように言った。
「多分、強いストレスのせいで、
切迫早産しそうになったそうよ。
もうちょっとお腹に居て貰わないとね?」と、
祖母は少し戯けた顔で言うと、
「わたくし、飲み物を買ってきてから、
ナースステーションに声を掛けてくるわね?」とウィンクをして席を立った。
二人きりになると、アラムは私の髪を撫でて、
顔中にキスをしながら、
「本当に良かった!
マーサとムスコを、両方なくすと思ったよ」と、
涙を流す。
「えっ?
ムスコ?」
「あ…。
ごめん。
途中で看護婦さんが口を滑らせたんだ。
男の子だって」
「そう。
だったら、アラムに似た、
逞しくて優しい王子さまね?」と言うと、
アラムは嬉しそうな顔をする。
「自宅に戻ると、ついつい動いてしまうだろうから、
暫く入院した方が良いって。
僕、毎日、ここに来るよ?
それと、結婚の届出も提出しようね?」と言って、優しく笑った。
入院中は、本当に毎日のように、
祖母とアラムがお見舞いに来てくれた。
そして、アラムは4月から日本の事務所で仕事を始めることが出来ることが正式に決まった。
今回は書類もきちんと揃って、
日本の役所とアラムの国の領事館に、
婚姻届を提出して受理された。
アラムは、私の姓を名乗ることを選んだ。
私の方は、本を持ち込んで、勉強にも集中出来て、
良かったのかもしれない。
実家の母も、こっそりお見舞いに来てくれて、
婚姻届にも署名してくれたけど、
父は一度も会いに来てくれることはなかった。
退院後、4月に大学の授業が始まった時は、
履修届だけ車で提出に行って、
択一試験を受けた一週間後に出産した。
出産は、逆子だったことと、
思いの外、赤ちゃんが大きかったので、
帝王切開になってしまったけど、
大きいお陰で最初からしっかりしていて、
祖母と母いわく、
「とても育てやすい」ということだった。

