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全部、夏のせい
第9章 愛別離苦
「あの日、女子供を拐いに奴等が来た時、
アラムはそれを止めようとして、
銃で脚を撃たれた。
僕は怖くて、隠れたままで、
助けにも行かなかった。
アラムはそこで蹲って苦しんでいた。
奴等が女達を漁って居る時に、
一人の男の子がアラムに近付いて、何か話していたようだった。
その後、その子は走って暗闇に消えた。
暗くて誰だったかは見えなかった。
戻ってきた奴等は、
アラムのことを引き摺るように車に乗せると、
そのまま走り去った。
西の方に向かったけど、
僕達はそれを追い掛ける勇気もなかった。
見殺しにして、申し訳ない」

ルイはそう言うと、涙を流しながら、
大きな身体を折るように頭を下げた。


私はルイの肩にそっと手を置いて、

「見殺しじゃないわ?
まだ、死体を見た訳じゃないから、
何処かで生きてるかもしれないでしょう?
また、探しに来ます。
さっき言ってた男の子、
昨日、アラムから小さい箱を受け取ってくれたの。
銃で撃つようなジェスチャーをされて、
絶望してたけど、
ルイが、脚を撃たれたって教えてくれたから。
脚なら致命傷じゃないわ?
片脚がなくなっても、
命さえあれば問題ないもの。
良い知らせをありがとう。
何か判ったら、知らせてください。
また、会いましょうね?」と言って、
ルイをハグして、別れた。



飛行機の中で、寄木細工の小箱をそっと開けた。

中には私にパリでくれたのと良く似た、大きな紋章のようなものがついた大振りの指輪と、
小さく畳んだ紙と、
四つ折りにされた家族三人で撮った写真が入っていた。


涙で文字が滲んで読めそうにないので、
紙を畳んで箱の中に戻して斜め掛けのバッグに仕舞った。



成田では、両親と祖母とアダムが並んで待ってくれていた。
そのまま、父の運転する車に乗り込んで、
車の中で気絶するように眠って、
気づいたら久し振りの実家だった。


先にお風呂をと言われて、
アダムが一緒に入ると言ってきかないので、
1週間ぶりに二人で入浴した。

アダムはいつも、私のお腹をそっと触って、
「僕、ここから出てきた」と言う。


「そうよ」と言うと、

「痛かった?」と心配そうな顔をするから、

「大丈夫よ」と言って、いつもキスをすると安心した顔をして、
私に優しくキスを返す顔は、
アラムに生写しのようで泣きそうになった。

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