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全部、夏のせい
第9章 愛別離苦
アダムは長いドライブで疲れてしまったのか、
お風呂から出ると夕食もしないで眠ってしまったので、
大人は軽い食事を取って、
温かい焙じ茶を飲みながら、
現地での話をした。


「脚を撃たれたけど、そのまま連れ去られただけで、
誰も死体を見た訳ではないから、
生きている望みはあります」と私が言うと、
母がハンカチを目に当てて、
忍び泣くような声を出して心が痛くなってしまう。


そして、アリという名前の男の子が、
アラムの持っていた箱をこっそり受け取って預かっていてくれて、
私に返してくれたことも言った。

土埃や、ひょっとしたら血痕もついているかもしれないその箱を、
洗い流したりせずに、
そっとハンカチで拭いたままにしていた。

バッグから取り出して、
寄木細工を少しずつ動かして開けて、
中身を見せた。

「指輪は、多分、アラムの身分を表すものなの。
私も同じ紋章のついた、一回り小さいものを渡されたわ。
『第一夫人の証』って言って、笑ってたの。
それと、アダムが産まれた後、三人で撮った写真を畳んでここに入れてたのね。
こちらの紙は、まだ読んでないの。
私が貰った箱には小さい封筒が入っていて、
『僕にもしものことがあったら開けるように』ってアラムは言ってたけど、
まだ、もしもの時じゃないわよね?」と言いながらも、
私の目には涙が滲んでしまっていた。


畳まれた紙を開くと、
良く判らない文字がぎっしり書かれていて、
その下に、フランス語で、翻訳が添えられているようだった。


アラムが父王に宛てた手紙で、
次のようなことが書かれていた。

私と正式に婚姻して、息子が誕生したこと。
国を捨てて、義務を果たせず申し訳ないこと。
父王を尊敬してやまないこと。
国が民に愛され、民の為に民主化することを祈っていること。
民主的な選挙で退任したら、日本に来て私と息子に会って欲しいこと。
王子(跡継ぎ)とは違う立場で、これからも父と国を助けることは出来ること。
そして、自分が亡くなったら全ての財産を私と息子に相続させるが、
息子が未成年のうちは信託財産とすること。

その手紙の後ろには、日本語と現地の婚姻届と出産届の書類も添えられていた。
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