この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
全部、夏のせい
第9章 愛別離苦
「これ…は…?」と、父が唸るような声を出す。


「文字通りなの。
アラムは…アフリカの小国の王子様みたいな立場だったの。
首長っていうやつかも。
あまり詳しく訊いてないの。
地理、良く判らなかったし、
そんなこと、どうでも良かったから。
後から考えたら、
留学先で、SPみたいな人がいつも近くに居たけど、
全然気にしてなくて。
そんな立場なのに、
アラムは、私と結婚したいって言って、
政略結婚だったらしい第一夫人さんと離婚して、
私と教会に通って、カトリックに改宗してくれて、
多分、そんなことしたから、
国にもいれなくなったんじゃないかしら?
でも、アラムはお父様とその話も出来て、
納得して貰えたって言ってて…」と言いながら、
涙が止まらない。


「あれ?
ここに書いてあるの、
電話番号じゃないかな?」と、手紙を手にした父が言う。


…誰が出るのかしら?と思いながら、
私は震える手で、電話番号をプッシュしてみた。



少し変わった呼び出し音の後、
嗄れたような声が、
「アラム?」と言った。


私はゆっくりとしたフランス語で、
「いいえ、違います」と言うと、

「マーサ?
マーサなのか?」と、
ゆっくりした英語で訊かれる。


私もゆっくりした英語で、

「はい。
そうです。
マーサです。
あなたは…?」と言うと、

「アラムの父だよ」と少し笑ったような声で言った。


国王に対する敬語で話し始めようとすると、

「普通に話してくれて構わない。
私は単なるアラムの父で、
単なる男だよ」と言った。


「あの…突然申し訳ありません。
アラムのこと、ご存じですか?」と訊くと、

「ん?
このホットラインはアラムしか知らない電話で、
マーサがこの電話に連絡しているということは?
アラムはどうしたのかな?」とゆっくりした口調で訊く。


「アラムは…、母国からの難民支援をしたいと、
隣国に行きました。
そこで…3週間ほど前に、行方不明になりました」と言うと、
息を呑んだような声なき声が聴こえて、沈黙が重くのし掛かってきた。
/323ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ