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全部、夏のせい
第10章 再びのエクス、そして隣国へ
アリが来て1週間ほど経った時、
ようやく、あの、アリ少年を見つけることが出来た。

片言の英語を話せるようになっていて、
身長は私より大きくなっていた。


アリに通訳して貰って、
当時の様子を訊いて貰うと、
あの時、アリは、母親と姉が連れ去られそうになっていて、
自分だけ逃げるように言われて、隠れながらそこから離れようとしていた。

その時、横たわるアラムに声を掛けられて、

「いつか、『マーサ』と言う小柄な東洋人が来たら、
必ずこれを渡してくれ」と言って、
小箱を渡された。

そして、「これはそのお礼に」と、
自分が嵌めていた指輪を渡されたと言った。


「えっ?指輪?」と声が震えてしまう。


アリ少年は、
首に掛けていた紐を引っ張って、
小さな布袋を出すと、
その中から、アラムの結婚指輪を出した。


エクスのカルティエで買った指輪で、
内側には二人のイニシャルと日付が入っていた。


私は震えて涙が止まらない。


「これ、大事なんだろう?
マーサに返すよ」と、アリ少年は言う。

「えっ?」

「隠して持ってるのも大変なんだ。
盗まれたり、奪われたりすることもあるから」と笑う。


「お母さんとお姉さんは?」と訊くと、
首を横に振る。

「何処に居るか、判らないの?」と訊くと、

「何処かで生きてるよ。
でも、酷い目に遭ってると思う。
売られたかもしれないし…」と、下を向く。


「お父さんは?」

「死んだよ。
だから、独りぼっち。
『難民』っていうヤツにもなれそうにないから、
ここでずっと手伝いをしてるんだ」と笑う。

だから、聴き取り調査で会えなかったのかと納得した。


「アリ、何か得意なこと、ある?
やりたいことは?」と訊くと、

「包帯、巻くのは上手いよ?
マーサのおばあちゃんにこの前、褒められた」と言った。


えっ?
そんな近くに居たのかと思う。


「アリ。
この指輪のお礼をさせてくれる?」と言うと、
私は手を引いて事務所に戻る。

アリ少年は、ポカンとした顔をしていて、
大人のアリは後ろ姿をぼんやり見ていた。
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