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全部、夏のせい
第11章 パリの長い夜
三段重ねの美しい銀のトレイに載せられたアフタヌーンティーセットのお菓子やサンドイッチ、フルーツを摘みながら好茶を飲む。


同席しているアリは、居心地が悪そうで、
なんだか気遣ってしまうけど、
お義父様は一向に気にしていない。


「マーサ、スイスには行ったかな?」とお義父様が言うので、
首を傾げる。


「ああ。
まだ、アラムを諦めてないから、行って居ないのか。
でも、一度、私が健在なうちに、
顔を出しておいた方が良いな」と言うと、
携帯を出して何処かに電話をすると、

「アリ、明日の午前のジュネーブ行きの飛行機を二枚、予約してくれ。
帰りのは、夜の便。
席がなければ、ホテルを取って、
明後日の便でも」とテキパキと指示する。


そして、
「アラムから預かっているものは無いかな?
多分、封筒だ。
ほら、私のホットラインがメモされていたようなもの」と言うのて、

「自分に何かあったら開けなさいと言われた箱に、
封筒が入ってました」と答えると、

「それは持っているかな?」と更に訊かれる。


頷いてバッグの一番奥底にお守りのように入れてある小さい箱を久し振りに取り出して開ける。


中には少しクラシカルな紋章のようなものが入った指輪と、
小さい封筒が入っている。

アラムがパリの、このホテルで渡してくれたまま、
封はまだ開けていなかった。


「こんなに長い不在なんだから、
とにかく、開けてみなさい」

そっと開けると、
二つ折りのカードに、
3行の文字が書かれている。


銀行名、
人の名前、
そして、数字の羅列。


お義父様は頷いて、

「これは、アラムがマーサに遺したものだよ。
使う、使わないは置いておいて、
確認に行こう。
担当者に会わせたいし、
必要なら手続きもあるから」と笑った。




その日も、ホテルでお義父様に抱き締められて眠った。

優しい頬や額へのキス。
優しく髪や背中を撫でてくれる温かい大きな手。

絶対的な安心感に包まれて眠ることが出来た。



そして、翌日、
ジュネーブに日帰りで出掛けることになった。

帰りのチケットを渡しながら、
「時間には迎えに来るので」とぶっきらぼうな顔で言うアリに、
お義父様は、
「なんだ。
宿泊ではないのか?」と、
揶揄うように笑って言うのを、
ぼんやりした顔で見ていた。
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