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全部、夏のせい
第12章 アリの想い
キャンプ地に戻る車の中で、
マーサはブランケットに包まれてグッタリしながら、
アラムの父王にもたれかかっていた。


「アラム…」と時折、名前を呼ぶのを聴くと、
苦しくて胸が張り裂けそうになる。

父王は、「鑑定して、結果が出たら直ぐに知らせる」と言って、
ヘリで帰って言った。


そして、フランスに帰る前夜、
衛星電話が来た。


鑑定の結果は、
「高い確率でアラムだ」ということだった。

歯型については、記録が何故か紛失していて、
簡易的なDNA鑑定だと説明を受けた。


マーサにそれを伝えるべきだったのかもしれない。

そうすれば、マーサも気持ちに踏ん切りをつけて、
俺がマーサを支えることも出来る。



そう思ったのに、
俺は、

「アラムではなかったようだ」と言ってしまった。


マーサが悲しむ顔をどうしても観たくなかったからだ。


それに、「高い確率」は、正確な鑑定ではないから。


いや。
多分、もう、アラムはこの世には居ないだろう。


でも、マーサの涙は観たくない。



そのくせ、マーサを自分のものにしたい。
マーサから、俺の元に来て欲しい。



そんな、甘っちょろい淡い期待を胸に、
俺は国に戻り、
マーサ達はフランスに帰った。


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