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全部、夏のせい
第15章 別離
日本に帰る前夜、
アリが私の部屋のドアをそっとノックした。


いつもお義父様もご一緒なので、
二人きりで話をするのはとても珍しいと思った。


「なんで、スイスに帰らないんだ?」
と言うアリに、
私は温かい紅茶のカップを勧める。

アラムが好きだったフレンチブルーのエキゾチックな香りに包まれる。


「お義父様を観てると、
どうしてもアラムのことを思い出してしまって、
辛いこともあって…」と口にすると、
涙が溢れてしまっていた。


「気持ちは整理出来ているはずなのに、
やっぱり、ダメみたい」と言う私を、
アリは抱き締めて背中や髪を撫でてくれる。


「俺じゃあ、ダメかな?」

「えっ?」

「俺じゃあ、アラムの代わりになれないかな?」と囁くように言うと、
涙を指先で拭ってから、そっと瞼にキスをして、
そのままゆっくり唇にもキスをした。


ただ、触れるだけのキスを暫くしていると息が苦しくなってしまって、
唇が開いてしまう。


アリは躊躇うように舌先を唇の間にそっと入れて、
私の舌を探るようにした。
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