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全部、夏のせい
第18章 エクスへ
アラムと時折訪れたレストランは、
外見はそれほど変わりはなかったけど、
シャルルはすっかり貫禄が出て、
当時の面影はなかった。


訊けば、リヨンで修行をして、
そのままその地でお店を持ってはと言われるほどになったけれど、
父親の体調のことや、新型ウィルスの影響のこともあって、
二年前にエクスに戻ってきたと言っていた。


ジャンが持ち込んだワインをいただきながら、
シャルルが作る料理を囲んだ。

シャルルのご両親にも座って頂いて、
給仕はシャルルの奥様にして貰う。


私は、まだあまり体調が良くないせいかアルコールの香りを受け付けなくて、葡萄ジュースを飲みながら食事を楽しんだ。


お義父様とジャンが意気投合してあれこれ話をして、
合間にアラムの話もして、
私はそっと席を立ってお化粧室で涙を拭ったりした。



ホテルに帰ろうとのんびり歩く私を気遣って、
お義父様が優雅に私と腕を組んでくださるので、
余計にアラムを思い出してしまった。


ホテルの部屋に戻って、
ぼんやり窓の外の暗がりを眺めていると、
遠慮がちなノックが聴こえた。


ドアの向こうにはアリが立っていたので、
お部屋に入って貰うと、

「マーサ、大丈夫か?
殆ど食べてなかったし。
具合が本当に悪いんじゃないか?
病院に行った方が…」と言う。



「大丈夫よ。
アリったら、大袈裟ね?
夏のせいなの」と答えると、
そっと抱き締めて、

「マーサになんかあったら、
俺…」と囁くので、

「何にもないったら!
おやすみなさい」と微笑む。


額にキスを落として、
「おやすみ」と言うアリを部屋から追い出すようにして、
ベッドに横になった。
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