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第18章 エクスへ

母国では、やることが多いお陰で仕事に没頭することが出来て、
レオンのことを考える時間はなかった。


契約をしたブランドに納品する生地については、
厳しく検品をする。

私がデザインして持ち込んだバッグや小物も、
指示書通りに出来ているかを、
現場のリーダーが検品出来ているかを確認する。

学校に導入されたミシンを使った授業の様子を視察する。


そんなことをしているだけで、
1ヶ月ほど、あっという間に過ぎていった。



レオンのことを考えないようにする為に、
ひたすら仕事をして、
夜は電池が切れたように眠るようにしていた。


それでも、ハッと起きてしまったりすることもあった。

おまけに、体調不良は続いていて、
嫌でも気付いてしまう。


私、妊娠している。



それはそうだ。

避妊をせずに二日間、
何度も何度も抱き合った。

確か、生理と生理の真ん中辺りに。

そして、その後、生理は来ない代わりに、
吐き気や倦怠感、食欲不振。


その一つ一つが、
妊娠の兆候だった。



でも…。


どうしようと言う気持ちは、なかった。


折角、授かった命だから、
大切に慈しんで、
独りで育てよう。


静かにそう思っていた。


その為に、身体に無理を掛けるのも止めようと思った。



問題は、お義父様に何と言うかということだった。

お義父様は先にスイスに帰ってしまったけど、
アリだけは、
私の体調が心配だとこちらに残っている。

アリのことだから、
多分、直前まで気がつかないとは思うけど、
気付いたら更に心配して、
父親探しを始めるだろう。

でも、その時はその時だと思って、
20年以上ぶりのマタニティライフを、
ひとまず、安定期になって落ち着くまではこの土地で過ごすことを決めていた。