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全部、夏のせい
第3章 深まる想い
エルメスでは、まだ私が欲しいものは入荷してなかった。

「ご縁だからと思ってますので…」と言って、
のんびりさせていただく。


寮のシャワーの話をしたら、
マダムは大きな声で笑って、

「若いうちは、色々なこと、
体験すると良いわね?」と言った。


先週の土曜日に行った教授のことはよくご存知で、
ここの顧客だとも言っていた。


「このシーズンは、バカンス用の物しかなくてね?」と、
ビキニやワンピースの水着、パレオを見せてくれるけど、

「私の身長では似合いませんね?」と言うと、

「そうね」とあっさり言われてしまう。


「秋冬物が入ったら、
巻き物やグローブが…。
まあ!
手も可愛らしいから、
グローブはサイズ、あるかしら?」と笑われてしまう。


そして、
「ここより、シャネルの方が、
丈の短いもの、あるかもね?
うちはどちらかと言うと年齢層高めだし、
身長も高いサイズを作ってるから」と言って、

「紹介してあげるわよ?」と、
電話を取るから、
慌てて止めた。


「あの…。
こちらで一つ、
一生大切に使えるバッグを買って帰る分しか、
お金、持ってないんです」と言うと、

「まあ!
嬉しいこと!!」と言って、
両頬にキスをされてしまった。


「でも、帰りまでに、
両親と祖父母のプレゼントもこちらで選びたいので、
今度は家族の写真を持って来ても良いですか?」と言うと、

「勿論よ!」とにっこりされた。



お店を出る時に、
アラムがマダムに何かを言っていたけど、
声が小さくて良く聴こえなかった。
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