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全部、夏のせい
第5章 ロザリーの結婚式

教会を出て、カフェで軽い朝食を取りながらこれからのことを少し話す。
アラムは神父様が帰り際に持たせてくれた聖書の上に手を置いて、
「マーサ。
さっき言った通り、
僕はマーサと結婚したい。
全部、捨てることになるから、
何もしてあげられないけど」と言う。
私はその大きな手の上に、
私の小さな手を重ねて、
「何もなくても、
お互いの愛情があれば良いと思う。
でも…」
「でも、何?」
「ご両親様が…。
特にお母様が哀しむと思うと…」
と言うと、
アラムは静かに言った。
「僕の母さんは、
第二夫人だったけど、
もう、亡くなったんだ。
父さんが留学先で一目惚れした女性を、
連れ帰って来たって。
僕の国の言葉も判らなくて、
いつも淋しそうな顔してた。
僕はそんな乱暴なこと、しないよ?
母さんは、キリスト教徒だったみたいで、
僕の国の風習に馴染めなかったみたいだし。
アラムって呼んでたけど、
本当は『アダム』って呼んでたのかも。
母さんに似たせいで、
僕、少し色白だし、
瞳の色もみんなと少し違って、
真っ黒じゃない」
「色白?」と言うと、
二人で可笑しくなってクスクス笑った。
笑うことで、
重たくなった空気が少し軽くなった。
「私の処はね。
祖母がお仕事で日本に来ていたフランス人と結婚したの。
結婚して祖父とフランスに移り住んだけど、結構大変だったみたい。
祖父が亡くなって日本に戻ったら戻ったで、
私の母は、当時は珍しいハーフだったから、
虐められたりしたって。
外見がちょっと違うだけなのにね。
母と父と大恋愛して、結婚しようとしたら、
父の家は仏教徒で、
カトリックの嫁は要らないって、
猛反対されて、
最初、駆け落ちしたんだって。
でも、私を授かって、
父方の祖父母も仕方ないなって、認めてくれて…」
「お母様は、仏教徒に改宗したの?」
私は首を横に振った。
「日本には信教の自由があるから、
別に夫婦で違う宗教、信仰してても良いじゃないって言って、
日本の風習や習慣として、仏教徒の行事は手伝うわって言ってた。
だって、貴方達だって、クリスマスにケーキ食べるじゃないって笑って…」
「そうか。
頭が柔軟なんだね?」とアラムは笑った。
アラムは神父様が帰り際に持たせてくれた聖書の上に手を置いて、
「マーサ。
さっき言った通り、
僕はマーサと結婚したい。
全部、捨てることになるから、
何もしてあげられないけど」と言う。
私はその大きな手の上に、
私の小さな手を重ねて、
「何もなくても、
お互いの愛情があれば良いと思う。
でも…」
「でも、何?」
「ご両親様が…。
特にお母様が哀しむと思うと…」
と言うと、
アラムは静かに言った。
「僕の母さんは、
第二夫人だったけど、
もう、亡くなったんだ。
父さんが留学先で一目惚れした女性を、
連れ帰って来たって。
僕の国の言葉も判らなくて、
いつも淋しそうな顔してた。
僕はそんな乱暴なこと、しないよ?
母さんは、キリスト教徒だったみたいで、
僕の国の風習に馴染めなかったみたいだし。
アラムって呼んでたけど、
本当は『アダム』って呼んでたのかも。
母さんに似たせいで、
僕、少し色白だし、
瞳の色もみんなと少し違って、
真っ黒じゃない」
「色白?」と言うと、
二人で可笑しくなってクスクス笑った。
笑うことで、
重たくなった空気が少し軽くなった。
「私の処はね。
祖母がお仕事で日本に来ていたフランス人と結婚したの。
結婚して祖父とフランスに移り住んだけど、結構大変だったみたい。
祖父が亡くなって日本に戻ったら戻ったで、
私の母は、当時は珍しいハーフだったから、
虐められたりしたって。
外見がちょっと違うだけなのにね。
母と父と大恋愛して、結婚しようとしたら、
父の家は仏教徒で、
カトリックの嫁は要らないって、
猛反対されて、
最初、駆け落ちしたんだって。
でも、私を授かって、
父方の祖父母も仕方ないなって、認めてくれて…」
「お母様は、仏教徒に改宗したの?」
私は首を横に振った。
「日本には信教の自由があるから、
別に夫婦で違う宗教、信仰してても良いじゃないって言って、
日本の風習や習慣として、仏教徒の行事は手伝うわって言ってた。
だって、貴方達だって、クリスマスにケーキ食べるじゃないって笑って…」
「そうか。
頭が柔軟なんだね?」とアラムは笑った。

