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第6章 結婚

「こんな所で痴話喧嘩と思われるのは、どうかと思いますが？」と言うと、
アラムの友人も、
「全くだ。
姉さん、みっともないから辞めなさい」と、
私にも判るようにということなのか、
英語で言ってくれると、
今度は私の判らない言語で、
また、アラムや友人に喚き散らしたり、
私を恐らく罵倒するような態度で何かを言った。


アラムの友人は、
フランス語で、
「済まない。
姉さんが謝りたいって言うから連れて来たんだけど。
連れて帰るよ。
後で、ホテルに来てくれるかな？
マーサと二人で…」と言うと、
引っ張るように彼女を連れて行ってしまった。


アラムは溜息をついた後、
「マーサ、大丈夫だった？」と私の腕をそっと見てくれると、
掴まれた処が紅くなっていた。


「妻じゃないよ。
元妻だから。
裁判所に申し立てて、
通ったという連絡、届いたから」と言って、
そっと笑った。


寮のお部屋で少し休んでから午後の授業に出た後、
アラムと一緒に久し振りにあの立派なホテルに行った。


最上階ではないお部屋に、
アラムの友人は滞在しているようだった。


「さっきは申し訳なかった。
姉さんは飛行機に乗せて返したよ？」と頭を下げる友人は、
以前のような冷たい顔ではなくて、
少しうんざりしているようだった。


「まさか、姉さんが浮気してたとは知らなかった。
しかも、あんな年寄りと！」と、
苦々しい顔で言って、

「アラムにも酷いことを言ってた。
名誉を傷付けるようなことを…」と頭を下げて謝っていた。


「名誉？」と私が言うと、
二人は顔を合わせて、
少し困った顔をした。


「あ…。
ごめんなさい。
立ち入ったことを訊いたりして、
失礼ですよね？」と言うと、
アラムは優しい顔で、

「大丈夫だよ？」と笑って、
私の手をそっと握って、
手の甲にキスをした。